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楽園からの旅人

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イタリアの浜辺にある古い小さな教会の取り壊しが決まり、老司祭(マイケル・ロンズデール)は悲嘆に暮れる。そんななか故郷を追われたアフリカ人が次々と教会に逃げ込み、教会堂の中にさながら小さな“段ボールの村”(原題)が出現する。その村にはイスラム原理主義のテロリスト、子ども、男、女が身を寄せ、さらに新しい命も誕生した。宗教を越えて、司祭はさまよう不法入国者たちを護ることに…。巨匠エルマンノ・オルミ監督がラスト作品を公言した後に作られた新作は、息子ファビオのカメラでシンプルな舞台劇のように撮られ、「他者との生存」というテーマを静かに熱く、様々な根源的な問いかけの中に未来の光を見つけ出そうとしている。

By 福嶋真砂代 August 14, 2013

イベント概要
(C)COPYRIGHT 2011 Cinemaundici

『木靴の樹』『ポー川のひかり』など数々の名作で知られるイタリアの巨匠エルマンノ・オルミ監督の最新作である。かつてオルミ監督は、『ポー川のひかり』(06)を自身の映画人生における最後の劇映画と語った。しかし5年後、前言を翻して、現代の黙示録ともいうべき本作『楽園からの旅人』を発表する。世界の状況が一層混迷するなか、この作品をとおして、よりよい社会への思いを改めて示さずにはいられなかったのだ。
明日にも取り壊される教会堂にひとり残る老司祭と、救いを求めてやってきたアフリカからの旅人たち。堂のなかに、にわかに誕生した段ボールの村。二夜にわたり人々の交流する姿があたかも一幕劇のように描かれ、いくつもの人生がひとつに織り成されてゆく。

映画では、さまよう人々への心優しい描写が印象的だ。彼らの境遇は苛酷だが、みなこよなく高貴で美しい。子どもは顔を輝かせ、母親がいて、新しい生命が誕生し、流す涙、淡い恋もある。オルミ監督にとって人間の存在そのものが喜びなのだ。「世界を温もりのあるものに戻す」という彼の人間性への信頼は失われることはない。不安に満ちた現代社会のなかで、旅人たちの神々しさを示し、すべては破局の中から新しく始まり、未来は私たちが築くものと語る『楽園からの旅人』は、まさに希望の映画である。

また、オルミ監督は今日におけるキリスト教の意味を、これまでも誠実に問い続けてきた。本作はその集大成ともいえる。前作と同様にキリストを彷彿とさせる人物が登場し、聖書の挿話も織りこまれている。そして、イスラム教、ユダヤ教の信仰にも触れられ、異なる宗教との対話と共存を暗示している。
教会堂に残り、さまよう人々を匿う老司祭を演じるのは、『とまどい』(95)でセザール賞助演男優賞にノミネート、『神々と男たち』(10)で同賞を受賞したマイケル・ロンズデール。『パリは燃えているか』(66)、『ジャッカルの日』(73)、『炎のランナー』(82)、『ミュンヘン』(06)など数々の作品で名脇役を務めるフランス映画界の重鎮である。
教会堂の管理人役には、『ブレードランナー』(82)のレプリカント役で注目を集め、以後、『ヒッチャー』(86)などの冷酷な悪役で熱烈なファンに支持され、一方で、オルミ監督作品では『聖なる酔っぱらいの伝説』(88)で神秘的な魅力を発揮した、オランダ出身のルトガー・ハウアーが演じている。またアフリカからの難民の多くは、実際に移民の人たちが演じている。原題は「段ボールの村」。

監督・脚本: エルマンノ・オルミ
撮影: ファビオ・オルミ
キャスト: マイケル・ロンズデール、ルトガー・ハウアー、アレッサンドロ・ヘイベルほか

上映時間: 87分

2013年8月17日(土)、岩波ホール他全国順次ロードショー

[ 映画 ドラマ 神田・御茶の水・秋葉原 ]
岩波ホール
日程終了
エリア 神田・御茶の水・秋葉原
住所 東京都千代田区神田神保町2-1 岩波ビル10F
アクセス 地下鉄「神保町駅」A6出口
電話番号 03-3262-5252
会場ホームページ http://www.iwanami-hall.com/
日程 2013年8月17日~2013年10月4日

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