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建築倉庫ミュージアム 2018.5.26 – 7.16
EXHIBITION

ル・コルビュジエ / チャンディガール展 -創造とコンテクスト-
建築倉庫ミュージアム 2018.5.26 – 7.16

Written by 石塚元太良|2018.7.2

建築倉庫ミュージアム 展示風景 撮影:岡野圭

チャンディガールには先月訪れた。モダニズムを推進したコルビュジエと、アジアの土着的な国家であるインドとの邂逅を思うだけでもドキドキせずにはいられないが、驚くべきは個々の建築以上に、チャンディガールの都市全体のグランドデザインをもコルビジェ自身が行なっていることだろう。現代においては、ゼロから一人の人間が都市を設計していくことなどは、もはや非現実的な出来事のように思われるからだ。

そんなチャンディガールは60年以上経った現在も「生きる」都市としてインド人に使用されている。ほぼどんな改修や改築も行われずにである。そのことの説得力と実際は、現地で確かめる以上に術はないが、チャンディガールのコルビュジエ建築の全容を知ることのできる展示『ル・コルビュジエ/チャンディガール展―創造とコンテクト』が、現在、建築倉庫ミュージアムで開催中である。

年表的な視点から見ると、チャンディガール全般の建築物は、これもまたコルビュジエの代表作である「ラ・トゥーレット修道院」が完成した1959年前後に設計されている。「ラ・トゥーレット修道院」といえば、院内の回廊に影が落ちる窓枠の格子スリットを思い浮かべるが、(その設計は、弟子であった作曲家のヤニス・クセナキスの影響が強かったと言われている)実際これはチャンディガールの様々な建築物にも多用されており、インドの眩いばかりの光が、建築の内部にまるで音楽のように、うつりゆく影を落としている。

チャンディガール美術学校の彫刻学科スタジオ風景
撮影:石塚元太良

先月の渡印の際には、主にコルビュジエが設計した「美術学校と建築学校」に照準標準を絞って自由に撮影をした。コルビュジェ建築がユネスコに登録されて以来、高等裁判所や総合庁舎などの建物は自由に見学撮影することが叶わなくなってしまった。(観光客は、ツーリストインフォメーションが主宰するツアーに参加するという形で見学が可能)ただこれは致し方ない。先に述べたように、それらはパンジャブー州の公的な施設として実際に使用されている裁判所と総合庁舎なのだから。

都市は、一つの建築以上に多様であり動的でかつ雄弁である。この展示でコルビュジェが、チャンディガールで描こうとした夢の一端をトレースすることは可能であるだろう。その設計にあたり自然環境やインドという土地との融合を、彼が模索していた様子がよくわかるからだ。

そんなマケットの集積や参考資料の山で妄想を膨らませたのちには、是非インドへコルビュジエの実作都市を経験しに赴いてほしいと思う。チャンディガールはインドの他の都市に比べ、安全面や衛生面でのハードルは、比較的低いということを最後に付け加えておこう。

INFORMATION

ル・コルビュジエ / チャンディガール展 -創造とコンテクスト-

建築倉庫ミュージアム
5月26日ー7月16日

WRITER PROFILE

Gentaro Ishizuka石塚元太良
石塚元太良 Gentaro Ishizuka

写真家。8×10などの大型フィルムカメラを用いながら、ドキュメンタリーとアートの間を横断するように、時事的なテーマに対して独自のイメージを提起している。近年は氷河、パイプライン、ゴールドラッシュなどをモチーフにアラスカやアイスランドなど主に極地方で独自のランドスケープを撮影。2004年日本写真協会賞新人賞受賞。2011年文化庁在外芸術家派遣員。初期集大成ともいえる写真集『PIPELINE ICELAND/ALASKA」(講談社刊)で2014年、東川写真新人作家賞受賞。また2016年、Steidl Book Award Japanでグランプリを受賞し、ドイツのSteidl社より新作の『GOLD RUSH ALASKA』を2018年に出版予定。

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