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EXHIBITION

宇治野宗輝 「ライヴズ・イン・ジャパン」
山本現代 2018.3.3 − 4.7

Written by 原万希子|2018.4.24

Plywood City Stories 2 2018 ©UJINO
Courtesy of YAMAMOTO GENDAI

畳の上でエレキ・ギターが唸り、大型のブラウン管テレビが置かれた障子の部屋に蛍光灯がまばゆく点滅する。これぞUJINOの世界観をたっぷりと見せつけた個展、「ライヴズ・イン・ジャパン」は、昨年2017年の横浜トリエンナーレで観客を圧倒させたインスタレーションの一部で発表した《プライウッド・シティー・ストーリーズ1》の続編、《プライウッド・シティー・ストーリーズ2》のビデオから始まり、3つの大型のビデオ・インスタレーションと絵画作品で構成された新作だ。しかし、ギャラリーのドアを入る前からいつもの騒がしい騒音楽が聴こえてくるので胸を膨らませ、会場に入ると、今回の展示会場はいつもと様子が違うのだ。以前に発表していた《ローテーターズ》や《プライウッド・シティー》などのシリーズのインスタレーションでおなじみな、いわゆるUJINO的世界を体現する張り巡らされた電気配線や家電やギター、車やタンスや輸送クレートなどの物質感あふれるモノが、スピーカー以外一切排除されているのだ。聴こえてくる爆騒音楽は、シンプルにビデオプロジェクションやフラットスクリーンのモニターに繋がれたスピーカーから流れており、音はともかく見た目が意外なほどにすっきりしたビデオ・インスタレーションなのである。それはこれまでアーティストの継続してきた20世紀以降の大量消費社会における「物質世界のリサーチ」が、モノ自体を見せる方法論からモノという対象を語る内容に比重が置かれ、新しい段階に入ったことを予感させる展開であった。

 

Lives in Japan 2018 Installation view ©UJINO
Courtesy of YAMAMOTO GENDAI  Photo by Keizo Kioku

 

最初のギャラリーのプロジェクション《プライウッド・シティー・ストーリーズ2》は、宇治野の自叙伝的ビデオ作品で、ヘッドフォーンをつけて、宇治野本人の低くよく通る声で、翻訳英語で語られる物語は、満州に徴兵され戦後に引き上げてきた父や、戦後のアメリカ型消費社会のシンボルでもあるタッパーウエアーへの母親の愛着などの自身の家族の物語に触れながら、戦後に練馬に父親が建てた、「陰影礼賛」を思わせるような典型的な平屋の木造日本家屋を舞台に、アーティスト自身がそこで育ってきた60年代から現在までの、日本の和式の文化空間が70年代以降に家電で和洋折衷な近代化してゆく過程で起こってゆく様々なジレンマを分析的に訥々と語っている。最後に、「21世紀に入り照明はLEDに、テレビはフラットスクリーンに変わり我々日本人は西洋化=物質的矛盾の呪縛から解放された」という内容のフレーズが入る。これが、今回の新作で見せた新境地を理解する一つの手がかりであるように思えた。本人曰く、このビデオはキュレーターであり友人の映画監督、渡辺真也氏の映画『SOUL ODYSSEY-IN SEARCH OF EURASIA』(2016)から影響を受け、渡辺氏に捧げる作品だそうだ。

 

Lives in Japan 2018 Installation view ©UJINO
Courtesy of YAMAMOTO GENDAI  Photo by Keizo Kioku

 

隣の大きい方のギャラリーには時計回りに、4つのフラットスクリーン画面で周波数の異なるラジオを写し、その音声がシンクロしてゆく《電波街》、6つのシンクロするフラットスクリーン画面に映された、自身が住む日本家屋を舞台に、ローテーターズでおなじみの演奏者たちが騒音学を奏でるビデオ・インスタレーション作品《ライヴズ・イン・ジャパン》、そして筆者が最初に来廊した際には右奥には、作業台が置かれ宇治野宗輝本人が壁に取り付けられた2枚の大パネルに公開制作でペインティングを制作していた。(これは最初の数週間公開制作で発表され、後半は完成作品のみの展示に変わった)。《ライヴズ・イン・ジャパン》は、本人曰く、昨今の大人から子供までを魅了するYouTuber(ユーチューバー)を研究し、まさにYouTuber的にすべて自作自演で撮影された映像なのだ。それは、全くミスマッチな和室の部屋に、まるで吊るし首のように設置されたギターを改造した楽器や家電たちから響く爆音が次々と横のモニターとシンクロして行き爆騒音楽になってゆく、UJINO的世界だが、今回の展示では展示方法のスマートさと内容の和洋折衷な滑稽さで不思議な世界感を演出していた。また、本展で唯一物質的な存在感を持つ2点の大型木製パネルにポップなカラーで描かれたペインティングは、今回の中心作品になっている《プライウッド・シティー・ストーリーズ2》の中でキーワードになる、畳、大型テレビ、蛍光灯など戦後の日本の文化空間に出現し、近代化とともに生活様式に侵入してきたモノたちを滑稽な現実として描いている。「ライヴズ・イン・ジャパン」は、宇治野自身の非常にパーソナルな物語を語りながら、実は20世紀から21世紀に移行して早20年弱が過ぎようとする我々の社会の現実と繋がっていることを考えずにはいられなくなる確信犯的展覧会であった。

 

 

 

INFORMATION

宇治野宗輝 「ライヴズ・イン・ジャパン」

2018年3月3日ー4月7日
山本現代

WRITER PROFILE

原万希子
原万希子 Makiko Hara

コンテンポラリーアートキューレーター 1967年東京生まれ、バンクーバー在住。コンコルディア大学美術学部美術史修了。2007年にバンクーバーの国際現代アジアアートセンター、Centre Aのチーフキュレーター就任を機にカナダに移住、2013年に独立。90年代よりカナダとアジアを繋ぐアートプロジェクトを数多く手がける。最近の主なアートプロジェクトは、Scotia Bank Nuit Blanche(トロント、2009)、鳥取藝術祭、AIR 475プロジェクト(米子市、2014-2016)、『仮想のコミュニティー・アジア』黄金町バザール2014(横浜、2014)、105本の菊の花、シンディー望月個展(若山美術館、東京、2016)、Rock Paper Scissors/石紙鋏、シンディー望月個展(米子市立美術館、鳥取県、2018)など。2017年春から秋田公立美術大学国際交流センター、アドバイザーに就任。

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