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2018.4.21-5.27 無人島プロダクション
EXHIBITION

田口行弘展 「If you want to go fast, go alone. If you want to go far, go together.– “早く行きたいなら一人で行け、遠くへ行きたいなら一緒に行け”」
2018.4.21-5.27 無人島プロダクション

Written by 兼平彦太郎|2018.6.1

Yukihiro Taguchi, Discuvry, 2013-14 ©Yukihiro Taguchi, Courtesy of the artist and MUJIN-TO Production

 

国内では5年ぶりとなる田口行弘の個展である。タイトルは田口が「2013年にケニア・ナイロビへ制作で訪問した時、キベラと呼ばれるスラムを拠点とする地元アーティストが教えてくれた座右の銘」(展覧会ステイトメントより)に由来する。これはコミュニケーションや共同作業による可能性とそこから生まれる付加価値の共有など、田口がプロジェクトでめざす思考や実践ともリンクしている。

展示はそのケニアでの滞在と時期を同じくして、2年間にわたりベルリンの空き地にスクワットしログハウスを建て、地元のヒッピーたちのコミューン的なるものへと発展をとげる起点となったプロジェクト《Discuvry》(2013-2014)とそこから派生した近作群のスクリーニング、そして今年7月に香港のCentre for Heritage Arts & Textile(CHAT)で展示される予定の最新プロジェクト《Spun Dragon》のプランドローイングやそのキックオフとなるワークショップ《Let’s Weave!》から構成されている。

 

Yukihiro Taguchi “If you want to go fast, go alone. If you want to go far, go together.”, installation view, 2018 Photo: Kenji Morita
© Yukihiro Taguchi, Courtesy of the artist and MUJIN-TO Production

 

これまでも訪れた土地の住民たちと協働しながらローカルアイテムやアイコンを用いて、サイトスペシフィックな作品を制作してきた田口だが、今回展示されている近作群には、これまで以上に土地の持つコンテクストに深い洞察が向けられている。経済活動、生態系、伝承・民俗(フォークロア)といった現代社会や文明社会を形成するサイクル(循環)やバトン(継承)について示唆する作品は、ケニアとベルリンでの体験が、田口に作家としての眼差しや思考に大きく影響を与えたことをうかがわせ、結果、我々に日々の営みとの関わりやその有り様について、改めて気づきをもたらすことにも成功している。

 

Yukihiro Taguchi, MADE IN KENYA, 2012-13
© Yukihiro Taguchi, Courtesy of the artist and MUJIN-TO Production

 

Yukihiro Taguchi “If you want to go fast, go alone. If you want to go far, go together.”, installation view, 2018 Photo: Kenji Morita
© Yukihiro Taguchi, Courtesy of the artist and MUJIN-TO Production

 

CHATで開催される展覧会のための《Spun Dragon》は、香港の各地域に祀られるドラゴン(日本でいう御神輿のような存在)を、まだドラゴンが存在しないCHAT周辺エリアのために制作するという。住民たちとの協働によって土地の新たな伝承を生み出すべく行われるプロジェクトは、作家が自作を「パフォーマティヴ・インスタレーション」とよぶように、この協働による制作行為そのものが田口のインスタレーション作品として自立をしながら、その後は完成したドラゴンとともに住民や参加者たちの日々の営みの一端として共有され継承されていくことをめざしている。

 

Yukihiro Taguchi, Spun Dragon (final plan), 2016, Photo: Kenji Morita
© Yukihiro Taguchi, Courtesy of the artist and MUJIN-TO Production

 

さて、政治や経済、文化や歴史認識まで、あらゆる事象が混沌を極め閉塞した東京において、この都市にコミットした田口の新作を期待してしまうのは筆者だけではないはずだ。彼の作品からもたらされる気づきとそこからの作用を、いままさに我々は必要としている。今回は国外でのプロジェクトのプレゼンテーションが中心となったが、次回は是非、東京をテーマとしたプロジェクトの新作発表を期待する。

 

 

INFORMATION

田口行弘展 「If you want to go fast, go alone. If you want to go far, go together.– “早く行きたいなら一人で行け、遠くへ行きたいなら一緒に行け”」

2018年4月21日- 5月27日
無人島プロダクション

WRITER PROFILE

Hikotaro Kanehira兼平彦太郎
兼平彦太郎 Hikotaro Kanehira

キュレーター。東京在住。近年の主な展覧会やプロジェクトに「ジェイ・チュン&キュウ・タケキ・マエダ」(2017)、「トレッドソン・ヴィラ・マウンテン・スクール 2016」(2016|落合多武&アン・イーストマン企画発案)[共にstatements(東京)]、「ミヤギフトシ American Boyfriend」(2013~)など。また、インディペンデント・パブリッシャーとして、増本泰斗、青木陵子、ジェイ・チュン&キュウ・タケキ・マエダ、小林エリカ、青崎伸孝、南川史門などのアーティスト・ブックやzineの企画・発行も手がける。

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