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瀬々敬久監督 『友罪』 
2018.5.25 –

Written by 福嶋真砂代|2018.5.15

 

「瑛太と生田、格別の化学変化に嗚咽が止まらない」

インディーズ巨編『ヘヴンズ ストーリー』(2010年)は4時間38分という長尺にもかかわらず、瀬々敬久監督の「加害者と被害者の関係性」という難関テーマへの真摯なチャレンジが多くのファンを惹きつけた。そしてこの流れを汲む最新作『友罪』では、薬丸岳の同名小説を原作に、児童連続殺傷事件の犯人「少年A」の”その後”が豪華キャストで描かれる。

物語は、ホームレス状態のふたりの青年、鈴木(瑛太)と益田(生田斗真)が、郊外の町工場に見習いとして職につき、出会うところから始まる。14歳で罪を犯した鈴木は、少年院を経て、名前を変え、別人として生きている。益田は、寮の隣人となった鈴木の恐ろしいうめき声に驚き、「大丈夫か」と問うと、逆に「きみは何に苦しんでいるの?」と問い返される。ジャーナリストの夢に破れた益田もまた悪夢にうなされていたのだ。その頃、埼玉で児童殺人事件が起き、17年前の犯人の再犯ではないかという噂が流れる。一方、AV出演を強要した元彼(忍成修吾)に執拗につきまとわれた美代子(夏帆)は、偶然救ってくれた鈴木に想いを寄せる……。さらにタクシー運転手の山内(佐藤浩市)や、少年院で鈴木の担当だった白石(富田靖子)ら、それぞれに問題を抱える人々が登場し、いくつものドラマを紡ぐ瀬々の真骨頂の「群像劇」の迫力、長回しシーンの緊迫感に酔いしれる。濃密に、ダイナミックに人物の心情が織り込まれ、このテーマへの瀬々の熱量がじりじりと伝わってくる。

 

 

©薬丸 岳/集英社 ©2018映画「友罪」製作委員会

 

注目すべきは、瑛太と生田の散らす火花。孤独で理解を越える元殺人者の内面にまるでゾーンに入ったかのようにシンクロする瑛太、そしてジャーナリストとしての出世欲と”友人”として鈴木を守りたいと思う良心の狭間で揺れる、益田の複雑さに貪欲に挑む生田。「ある意味、存在として真逆」と瀬々が評するふたりの役者が起こす化学変化は格別美しい。

しかし映像に映る彼らの衝突の激しさとは対照的に、彷徨う魂の旅に寄り添い、どこまでも控えめな半野喜弘の音楽も深く印象に残る。平成の終わりに、瀬々が「こんな世界であってほしいという”願い”」を込めて作った渾身のフィクションは、他人事としてではなく、当事者として、「あなたなら友人でいられるのか?」と問いかける。

 

INFORMATION

『友罪』

監督:瀬々敬久
出演:生田斗真、瑛太、夏帆、山本美月、富田靖子、佐藤浩市
2018年 / 129分 / 日本
2018年5月25日(金)全国ロードショー http://gaga.ne.jp/yuzai/ ©薬丸 岳/集英社 ©2018映画「友罪」製作委員会

WRITER PROFILE

Masayo Fukushima 福嶋真砂代
福嶋真砂代 Masayo Fukushima

旧Realtokyoでは2005年より映画レビューやインタビュー記事を寄稿。1998~2008年『ほぼ日刊イトイ新聞』にて『ご近所のOLさんは、先端に腰掛けていた。』などのコラムを執筆。2009年には黒沢清、諏訪敦彦、三木聡監督を招いたトークイベント「映画のミクロ、マクロ、ミライ」MCを務めた。航空会社、IT研究所、宇宙業界を放浪した後ライターに。現在「めぐりあいJAXA」チームメンバーでもある。

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