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CLEAR GALLERY TOKYO 2018.6. 29 – 7.21 
EXHIBITION

古賀学個展 “GO DIVE”
CLEAR GALLERY TOKYO 2018.6. 29 – 7.21 

Written by 澤 隆志|2018.8.21

撮影:逢坂憲吾 © Manabu Koga

 

日本の書籍、月刊誌、週刊誌は96,97年あたりをピークに、以降減り続けている。(リンク1)代わりに台頭してきたのが、ネットメディアである。古賀学はアーティスト活動の傍ら、デザイナーとしてジャンルを横断する活動を続けている。活動初期はまさに雑誌文化の最中で、DTP黎明期かつインターネット前夜である。1993年に個人で始めたフリーペーパー「Pepper Shop」はアーティストやデザイナーなどへのインタビュー形式で、今となってはgoogling不可な90年台のシーンの貴重な資料だ。

 

© Manabu Koga

 

2002年より継続しているのが「水の中の女の子」テーマの映像作品で、2012年、水面の下の競泳水着とニーハイソックスの偶然の出会い「水中ニーソ」(リンク2)が誕生し、2017年には美術展デビューも果たす。(リンク3)その数多いヴァリアントのひとつが、今回の個展で展開されるLEGOとの共演?である。Pepper Shopから20年余、水中ニーソはSNS時代に強くコミットした表現であると古賀はいう。それは単にキャッチーでかわいくて映えるヴィジュアル表現ということではなく、我々が生きているヴィジュアル環境とは、すでに重層的に組み合わされ、盛られ、ビルドされたものだから。そんな”今”の表現。古賀はそれを「ピクセルリアリズム」と称した。ピクトリアリズムとして写真が絵画に寄せてきた動き、ストレートフォトとして写真独自の方法を追求した動き、それらを踏まえ、SNSで毎日毎日セルフィーを加工しまくっている時代のリアリティ。ポスプロを前提とする世界のリアリティ。こうなると「写真」という訳語がやっかいだ。「光画」や「照片(中国語)」のなんと軽 やかなこと。

 

撮影:逢坂憲吾 © Manabu Koga

 

写真に写るモデルがLEGOでできた装備を着けている。うん、かわいい。が、おかしい。よくよく見ると装備はLEGOでできたものの写真を拡大して、モデルの大きさに合成している。原寸のLEGOっぽい成形物を着用するのでなく。実寸のLEGOを大量に用いて実物に近づけるわけでもなく。(リンク4)あえて最小限のピースで”らしい”形を割り出している。ここで、1枚の写真のなかに異なる大きさ、異なる素材、異なる解像度、異なるカルチャー、異なるビルダーが共存する世界がある。それが独自のリアリティをうみだしていた。酷暑の東京に出現した涼しく熱いクリエイティブだった。

INFORMATION

古賀学個展 "GO DIVE”

会期:2018年6月29日〜7月21日
会場:CLEAR GALLERY TOKYO

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澤 隆志 Takashi Sawa

イメージフォーラムのフェスティバルディレクター(2001-10)を経て現在はフリーランスのキュレーター。
あいちトリエンナーレ(2013)、東京都庭園美術館(2015,16) 、青森県立美術館(2017,18)などでキュレーション。また、「Track Top Tokyo」 (2016) 、「都市防災ブートキャンプ」(2017)、「めぐりあいJAXA」(2016-18)など都内の隠れたセクシー物件でイベントを行っています。

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