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トーキョーアーツアンドスペース本郷 2018.11.24-12.24
EXHIBITION

現像(キオ・グリフィス+細淵太麻紀)「photopia/scotopia-東京」現像 Vol.4
トーキョーアーツアンドスペース本郷 2018.11.24-12.24

Written by 港 千尋|2019.2.11

photo:現像

 
 
都市を現像する
 
 
「東京」の写真を集めています。

ストレートな呼びかけが、細淵太麻紀とキオ・グリフィスが主宰するプロジェクト「現像」から届いた。彼らが刊行している冊子「現像」の第4号を、公募による作品で編集するのが目的である。ユニークなのは編集のプロセスを公開するところで、集められた作品を会期中にTOKASの会場で展示した。プロジェクトのタイトル「photopia/scotopia」は、それぞれ明るい場所と暗い場所でわたしたちの視覚が起こす反応のことだが、その意図は次のように説明されている。

「明るい展望も暗い隠蔽もないまぜとなった都市の意思は、区画や建物の変化にとどまらず、都市を行き交う人々の細胞にも無意識に及ぶ。」

会場に足を運んで驚いた。コピー用紙に出力された写真が、壁だけでなく、縱橫に張り巡らされたワイヤーに吊るされている。かつて暗室でプリントした印画紙は、洗濯バサミで吊るして乾燥したものだ。このインスタレーションから、暗室の記憶が蘇る参加者がどれくらいいるだろうか。アップロードはtwitter、instagramでも可能だから、「インスタ映え」的な写真ばかりになるのではないか。でもそんな私の予想は軽く裏切られ、しっかりした作品が次々に目に入る。細部に目を凝らすとプリントに小さな手書き文字で、タイトルと作者名が書かれている。

photo:現像

森山大道、鷹野隆大…作家もそうでない人も分け隔てなく、一律同じように展示される。トークショーで、現ブリヂストン美術館副館長の笠原美智子氏は、それを「残酷な展示」と呼んだ。確かにプロにとっては残酷かもしれないが、おそらく公開編集の意図はそこにある。「現像」の呼びかけに対して、「東京」はどう反応するのか。その反応においては、プロもアマもない。みな平等に公開で編集する。この方法により、場所を持たないネット空間を暗室に見立て、そこに上がってくるイメージを通して、「ソーシャルメディア」では現れてこない、都市の意識と無意識が現像されてくるのである。

ふと思った。同じことを現在のロンドンで行ったら、いったいどんな無意識が出てくるだろう。現代写真の地平を拡張する、独創的なプロジェクトとして注目していきたい。

photo:現像

 

INFORMATION

現像(キオ・グリフィス+細淵太麻紀)|「photopia/scotopia-東京」現像 Vol.4
OPEN SITE 2018-2019 公募プログラム【展示部門】

トーキョーアーツアンドスペース本郷
2018年11月24日―2018年12月24日

WRITER PROFILE

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港 千尋 Chihiro Minato

1960年生まれ。写真家・批評家。多摩美術大学情報デザイン学科教授。芸術人類学研究所メンバー。映像人類学を専門に、写真、テキスト、映像インスタレーションなど異なるメディアを結びつける活動を続けている。記憶、移動、群衆といったテーマで作品制作、出版、キュレーションを行う。国内外での国際展のディレクションも手がけ、ベネチア・ビエンナーレ2007では日本館コミッショナー、あいちトリエンナーレ2016では芸術監督を務める。

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