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東京国立近代美術館 2018.6.19−9.17
EXHIBITION

ゴードン・マッタ=クラーク展
東京国立近代美術館 2018.6.19−9.17

Written by 河内タカ|2018.6.29

《スプリッティング》1974年
ゴードン・マッタ=クラーク財団&デイヴィッド・ツヴィルナー(ニューヨーク)蔵
©The Estate of Gordon Matta-Clark; Courtesy The Estate of Gordon Matta-Clark and David Zwirner, New York/London/Hong Kong.

 

マッタ=クラークの創造性が育まれた場所

 

わずか10年という短いアーティスト活動の間に、人が住む空間や場をテーマにしたラジカルなプロジェクトを行うも35歳という短命に終わったゴードン・マッタ=クラーク(1943-1978)のアジア初となる回顧展が国立近代美術館にて行われている。彼がなぜ一軒家を切断するにいたり、レストランの運営にかかわっていたかを探るべくこの意欲的な展示に足を運んだ。

「PLAYGROUND(公園)」を意識したという会場構成は作業途中の仮設広場のような空間になっていて、そこにマッタ=クラークが残した写真やコラージュ、映像などがカテゴリーごとに散りばめてある。代表作《スプリッティング》から切り取られた家の四つの残骸、レストラン《FOOD》や木の上で行われた《Tree Dance》など貴重な映像、模型や手書きのメモ、館外には東京で新たに作られた《ごみの壁》などなど、マッタ=クラークのアナーキーさを知るには充分なボリュームであり、70年代のNYのアートコミュニティにどっぷりと根ざし制作を行なっていたマッタ=クラークの全貌を辿れる内容となっている。

《スプリッティング:四つの角》1974年 サンフランシスコ近代美術館蔵
San Francisco Museum of Modern Art, Purchase through a gift of Phyllis C. Wattis, The Art Supporting Foundation, the Shirley Ross Davis Fund, and the Accessions Committee Fund: gift of Mimi and Peter Haas, Niko and Steve Mayer, Christine and Michael Murra; Photo: Ben Blackwell; Courtesy the San Francisco Museum of Modern Art.

さて、この展示からではなかったのだが、幸い本展のカタログを通じて若きマッタ=クラークが自らのアイデアを推し進めた重要なプラットフォームがあったことを知ることができた。それがソーホーにかつてあった「グリーン通り112番地」という実験的かつ非商業的なスペースだ。彼はこうコメントしている。

「多様性のるつぼのような場所だった。その主流の一つに、特定のスペースで、その特徴を使って制作する、という考え方があって一般化という考えは軽視されていた。僕が目指したのはスペースを根本から変容させること。つまり建物自体の(記号としての)システムについての認識をね、理想化するんじゃなくて、そのスペースに実際ある材料を使って….」と。*

そう、この場所こそ空間をまるごと素材とするようになる彼の独創性が育まれたところだったのだ。例えば、彼はこの地下に住みながら深く掘った穴に桜の木を植え、土くれの山にも草の種を蒔きグローライトを当てることで真冬の真っ只中に緑に覆われた丘に桜が花を咲かせるといったことを行なっていた、というのだ。

加えて、マッタ=クラークは自分をある種のパフォーマーとみなしアートを「シアター」とする考えを持っていたということも知った。単にアートの創作にとどまらず、身近な食や音楽やダンスなどにいたる要素も取り入れることで周囲にアクションを起こす、その流れで新たなコミュニティ形成を目論んだアートプロジェクト、それが《FOOD》だったというわけだ。放置されていた建物や都市のコミュニティに対し自身の創造性の枠を押し広げていったゴードン・マッタ=クラーク。今回の展示ではマッタ=クラークの基盤が形成されたグリーン通りのことは直接的には紹介されていないものの、創造性が育まれた当時の背景に関してはジェサミン・フィオーリのテキストで詳しく知ることができる。

*ドナルド・ウォールによるゴードン・マッタ=クラークへのインタビュー/初掲『Arts Magazine』1976年5月

レストラン「フード」の前で、ゴードン・マッタ=クラーク、キャロル・グッデン、ティナ・ジルアール 1971年 個人蔵 Photo: Richard Landry
© The Estate of Gordon Matta-Clark; Courtesy Richard Landry, The Estate of Gordon Matta-Clark and David Zwirner, New York/London/Hong Kong.

=展覧会情報=
東京国立近代美術館にて開催されているゴードン・マッタ=クラークの回顧展。わずか約10年という制作活動期間の中で、アート、建築、ストリートカルチャー、アーティスト食堂「FOOD」の運営など、1970年代に都市において多面的な活動を行なったマッタ=クラークの活動を約200点の作品で紹介する内容となっている。

INFORMATION

ゴードン・マッタ=クラーク展

東京国立近代美術館
2018年6月19日 - 9月17日

WRITER PROFILE

Taka Kawachi河内タカ
河内タカ Taka Kawachi

便利堂 海外事業部ディレクター 高校卒業後、サンフランシスコのアートカレッジへ留学し、卒業後はニューヨークに拠点を移し、現代アートや写真のキュレーションや写真集の編集を数多く手がける。長年に渡った米国生活の後、2011年1月に帰国。2016年には自身の体験を通したアートや写真のことを綴った著書『アートの入り口(アメリカ編)』と続編となる『ヨーロッパ編』を太田出版から刊行。2017年1月より京都便利堂の東京オフィスを拠点にして、写真の古典技法であるコロタイプの普及を目指した活動を行なっている。

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