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EXHIBITION

KAAT EXHIBITION 2018
さわひらき『 潜像の語り手』
KAAT 2018.11.11-12.9
さわひらきx島地保武『silts-シルツ-』
KAAT 2018.11.23 – 25

Written by 小崎哲哉|2019.1.18

撮影:Yumiko Inoue

 

さわひらきの作品には回転するモチーフが少なくない。影も重要な役割を果たし、メカニズムへの偏愛も感じられる。レディメイドの被写体が多いことも含め、明らかにマルセル・デュシャンの影響が認められる。

『潜像の語り手』展で観客が真っ先に目にする《Souvenir IV》も例外ではない。2012年に発表された4分ほどのモノクロの作品だ。暗い部屋の中に袖無しの黒いワンピースを着た女性ダンサーが立っている。床は板張りで、ダンサーが立つのは(さわ好みの)部屋の角。右手にある大きな窓から入り込む光が、左手の壁紙を淡く浮かび上がらせる。

さわひらき《Souvenir IV》(2012)撮影:西野正将

 

ダンサーは上から見て反時計回りに回りはじめる。その動きはマイブリッジの連続写真のように分割され、画面にはダンサーの顔と白い腕の輪郭による運動の痕跡が残像のように次々に重ねられてゆく。上下運動こそないもののデュシャンの《階段を降りる裸体 No.2》(1912)へのオマージュであることは疑いえない。

重要なのは、この作品が映写されるスクリーンが紗幕であることだ。展示技術の観点からは入口からも展示会場の内側からも鑑賞できることが重要だが、コンセプト的にはデュシャンの概念「アンフラマンス」との関連を指摘できるだろう。2次元の世界が、3次元を飛び越えて4次元に向かおうとする……。

 

さわひらき《HAKO》(2007)撮影:西野正将

 

さわが映像と空間構成を、島地保武が演出と振付を手がけた新作ダンス『silts-シルツ-』も同じ関心から生まれたものかもしれない。舞台にはL字型の白壁が建てられ、角に丸い穴が穿たれている。フロアも白色で、映像は壁の2面と床の、計3面に投影される。ふたりのダンサーは主に穴から出入りし、手持ちのボードで投影を遮り、したがって切り取られた映像はボードに映され、高次元の存在を暗示する。

デュシャン的モチーフとしては、回転するレコード、ラッパ型のスピーカーがつくり出す影、さらには箱を叩いて白煙を吐き出す仕掛けがある。仕掛けは、デュシャンがデザインを担当した雑誌『View』(1945年3月号)の表紙を連想させる。『View』においても『silts-シルツ-』においても、銀河を背景に白煙がたなびくのだ。

撮影:Yumiko Inoue

 

島地と酒井はなのダンスが素晴らしい。身体の大きい島地はエネルギッシュでダイナミック、小さな酒井は優雅で愛らしい。ふたりは、デュシャンにあってさわにない(というのが言い過ぎならあまり表に出ない)ふたつの要素を表してもいた。滑稽さと官能性である。

意欲的な領域横断だったが、最初の試みとあってまだまだ伸びしろがあるようにも思う。ぜひ再演を行ってほしい。

 

INFORMATION

KAAT EXHIBITION 2018
さわひらき『潜像の語り手』/さわひらき+島地保武『silts-シルツ-』

さわひらき 『潜像の語り手』
2018年11月11日-12月9日

さわひらき+島地保武『silts-シルツ-』
2018年11月23日-25日
会場構成・映像:さわひらき
演出・振付:島地保武
出演:Altneu(アルトノイ)(酒井はな、島地保武)

http://www.kaat.jp/d/h_sawa

WRITER PROFILE

Tetsuya Ozaki小崎哲哉
小崎哲哉 Tetsuya Ozaki

1955年、東京生まれ。ウェブマガジン『REALKYOTO』発行人兼編集長。京都造形芸術大学大学院学術研究センター客員研究員。同大学舞台芸術研究センター主任研究員。2000年から2016年までウェブマガジン『Realtokyo』発行人兼編集長。2002年、20世紀に人類が犯した愚行を集めた写真集『百年の愚行』を企画編集し、03年には和英バイリンガルの現代アート雑誌『ART iT』を創刊。13年にはあいちトリエンナーレ2013のパフォーミングアーツ統括プロデューサーを担当し、14年に『続・百年の愚行』を執筆・編集した。18年3月に『現代アートとは何か』を河出書房新社より刊行。

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