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EXHIBITION

落合多武『旅行程、ノン?』
小山登美夫ギャラリー 2019.1.12 – 2.9

Written by 蓮沼執太|2019.2.16

©Tam Ochiai, photo by Kenji Takahashi

ニューヨークを拠点に活動をするアーティスト落合多武さんの個展『旅行程、ノン?』が六本木の小山登美夫ギャラリーで開催されました。東京では2010年のワタリウム美術館での個展『スパイと失敗とその登場について』以来の9年ぶりとのことです。

僕と多武さんは、ニューヨークで知り合い、東京でお会いする機会は少ないのですが、2017年11月にアーティストのアン・イーストマンさんが企画した展覧会『サテライトTV』オープニングで僕と多武さんによる『overtones & Contagious, M』を披露し、2018年には日光のトレッドソン別邸とその周りで行ったイヴェント『TV Mountain School 2018』にオーガナイズ側として参加をしたりして、親交を深めています。

©Tam Ochiai, photo by Kenji Takahashi

さて、今回の新作展示には大きなペインティングが12作品あります。12作品異なる背景色に世界中にある国の月の休日、祝日の名称が都市名と描かれ、絵画を観ながらその都市を旅をする、というテーマです。休日に込められる意味。僕は「休日」という普段から感覚が無くて、常に何かしらの作業をしているタイプの人間ということもあり「休日」という印象は自分以外の人が感じるであろう1日です。でも、多くの人にとっては唯一自身を解放できるような嬉しい1日でもありますよね。人々が様々な意味を持つ日が「休日」です。そして世界様々な国の都市の「祝日」には宗教、政治などの歴史的な意味が込められています。ある意味でカレンダーのようなペインティングには「月」という季節を感じさせます。作品に含まれているこれらの多様な要素が僕らの想像力を刺激します。現代を生きる僕たちは世界中の都市を移動することが可能です。その際に発生する入国すること、出国することを改めて考えてみる。それは他者から自分自身のアイデンティティを認証されて初めて出入りを可能にします。そこには他者の視点が必ず存在します。ペインティングに描かれている「目」の存在はそういった他者による監視のような緊張をもたらします。「旅」という未知の体験には必ずつきまとう緊張という要素。それは他者の視線や新たな自分を発見する心の中にある視点だったり、「旅」の歓びや楽しさの裏側にあるピリピリとしたスリルを感じます。

©Tam Ochiai, photo by Kenji Takahashi

『旅行程、ノン?』はペインティングを通して、無数に存在する世界に連れていってくれる展覧会でした。多武さんは「絵画」というメディウムを僕たちの日常的視点に落とし込み、さらに再構築する作業をしています。そのプロセスは、ドローイング、立体、映像、パフォーマンス、ポエトリーなどの方法を持つことが可能にすることです。新作ペインティング展示を観て、自分も家に帰って新しい作品を作ろう、そう思わせてくれました。僕は自分にとって創作の糧になるような作品に感動します。それが生きることでもあるからです。多武さんの作品を自分の思考と連動させて、点と点を結んで線にしていくように。

 

INFORMATION

落合多武『旅行程、ノン?』

小山登美夫ギャラリー
2019.1.12 - 2.9

WRITER PROFILE

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蓮沼執太 Shuta Hasunuma

1983年、東京都生まれ。 蓮沼執太フィルを組織して各地でのコンサート公演をはじめ、舞台、ダンス、映画等への楽曲提供、環境音や電子音を中心としたサウンドワークから音楽プロデュースなど幅広い制作活動を行う。近年では、作曲という手法を様々なメディアに応用し、映像、サウンド、立体、インスタレーションを発表し、国内外で展覧会やプロジェクトを活発に行う。最新アルバムに『ANTHOROPOCENE』(蓮沼執太フィル / 2018)主な個展に『Compositions』(Pioneer Works 、New York / 2018)、『 〜 ing』(資生堂ギャラリー、東京 / 2018)などがある。shutahasunuma.com

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