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PERFORMANCE

ブランカ・リー『Solstice(ソルスティス)─夏至/冬至』
東京芸術劇場 2018.6.29~7.1

Written by ヴィヴィアン佐藤|2018.6.30

撮影・青木 司

ブランカ・リーはスペイン・グラナダ出身。自身は12歳でスペインの新体操のナショナルチームに所属し、NYへ渡りマーサ・グラハムに師事。自国へと戻りペドロ・アルモドバル監督作品に出演、振り付けに関わり、ジャン=ポール・ゴルチエやステラ・マッカートニーといったファッションショウの振り付けを担当。2013年、日本の現代美術アーティスト、明和電機とのコラボレーションで『ROBOT』を発表。これらの経歴からでも彼女の領域は単にダンサーやコレオグラフの枠には一切とらわれず、自由に同時代のクリエーターたちと同調していることが容易にうかがえる。同時代性に共通した集団の無意識のなかに有する感覚や良識、危機といったものを炙り出しているのかもしれない。

 

撮影・青木 司 

 

 

新作『Solsticeー夏至/冬至』は、地球の悪化する環境問題をテーマにしている。「ダンス」という行為を最もプリミティブで原始的なものととらえ、自然との関係性において踊られる民族的で自然発生的なダンスを意識しているようだ。

舞台は上下移動を繰り返す何層にもわたる無垢な白幕と、そこにプロジェクションマッピングによって時には激しく、時には緩やかに映し出される「火」や「水」。そして舞台上に吹き荒れる「風」と舞台に敷かれる漆黒な「土」。いわゆる四大元素のみが象徴的に登場する。人類が誕生するはるか以前の天地創造的な世界から、やがて動植物といった生命の誕生と進化、そして強い人類賛歌。地球の尊さや美しさが肉体によってテンポ良くリズミカルに語られていく神話の絵巻物か壮大な交響曲のようだ。打楽器や弦楽器による生演奏と、身体を使用したクラッピングは個々の言語を超え、もしくは言語が生まれる前の手段として全ての人類に平等に訴えかけてくる。

地球環境といっても進化論的ないわゆる自然=natureそのものではなく、存在することの不可思議や奇蹟、恩恵といった優美=graceが根底にあるのかもしれない。宗教を超え、地球や惑星を創造した壮大な神のような存在を意識。そこにダンスや肉体そのものを供儀する。その姿勢とは人類においてダンスが誕生した意味や目的、その誕生の瞬間の原風景を再現しているのかもしれない。

 

撮影・青木 司 

INFORMATION

ブランカ・リー『Solstice(ソルスティス)─夏至/冬至』

2018年6月29日~7月1日
東京芸術劇場 プレイハウス
主催:東京芸術劇場(公益財団法人東京都歴史文化財団)、東京都/アーツカウンシル東京(公益財団法人東京都歴史文化財団) 

WRITER PROFILE

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ヴィヴィアン佐藤 vivienne sato

美術家、文筆家、非建築家、ドラァグクイーン、プロモーター。ジャンルを横断していき独自の見解でアート、建築、映画、都市を分析。VANTANバンタンデザイン研究所で教鞭をもつ。青森県アートと地域の町興しアドバイザー。尾道観光大使。サンミュージック提携タレント。

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