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康本雅子 ダンス公演「タイコロンダ」
世田谷区民会館、2018.8.11
PERFORMANCE

パフォーマンスキッズ・トーキョー
康本雅子 ダンス公演「タイコロンダ」
世田谷区民会館、2018.8.11

Written by 住吉智恵|2018.9.6

Photo: Manaho Kaneko

ダンサー・振付家の康本雅子と小学3年生~6年生の子どもたち45名が10日間のワークショップを通じてオリジナルの舞台作品を創作。その最終日に開催された発表公演は予想を軽々と超える、この夏最高のスペクタクルだった。「タイコをつくる、叩く、踊る」をテーマに、自身も舞台作品を手がけてきたミュージシャンのASA-CHANGが音楽を担当。ワークショップ初日は1人に1つ、自分のタイコを作ることから始まった。そこからたった10日でクリエイションする画期的なアイデアには、2人のやんちゃ坊主を育てる康本ならではの目のつけどころが存分に生きていた。

撮影:金子愛帆

 

まず、シンプルだがバリエーションをつけやすい打楽器のリズムをベースにしているので、ダンス経験のない子や身体の硬い子でも身体が自然に動きやすい。子どもたちの多くが目と耳からのインプットだけで康本の動きを自然に身体のなかに入れ、のびのびと踊りまくっていた。康本は20代に放浪の旅のなかでアフリカに滞在し、そこで体験したコアなアフリカンダンスを自身の即興でも多用する。ヒップホップやバレエのような技術習得を必要としない、即興性から生まれるダイナミズムの萌芽がそこには生まれかけていた。

また、決まった振付を覚えさせるのではなく、即興的な動きのルールをいくつか決め、その組合せでシーンが作られている。「磁石のようにくっつこうとしても離れてしまう」といった、仲のいい友達同士の小さな儀式のようなルールを共有することで、パチッとスイッチが入れば身体が反射的かつ能動的に動き出す仕組みが効を奏していた。

撮影:金子愛帆

 

さらに子どもたちを数名のグループに分け、そのグループ単位でアクションを起こすように構成している。これによって規律正しく「前へならえ」の振りを教えなくても、大ホールのステージで間延びしたりバラツキが目立ち過ぎることなく、舞台全体に立体感や緩急、広がりが生まれる。ディテールを見ると子どもがただ好きなように動いているだけなのに、作品として大きく眺めれば生き生きと美しいフォーメーションを描いているのだ。

撮影:金子愛帆

 

2016年に康本雅子ら子育て中のダンサーやアーティストたちと共に筆者が立ち上げたプロジェクト「ダンス保育園!!」でも子どもとおとなが一緒に身体表現に親しむワークショップとパフォーマンスを継続的に展開している。一方で今回のように、子どもたちと一緒にゼロから作品を作り上げるプログラムはアーティストにとってさらに豊かな経験となり、自身の創作にきっと反映されるはずだ。体内に潜んでいた新たなDNAが活性化された康本のさらなる展開に期待が高まる。

 

 

INFORMATION

パフォーマンスキッズ・トーキョー
康本雅子ダンス公演「タイコロンダ」

【日時】 平成30年8月11日(土祝)
【演出・振付・出演】 康本雅子(振付家・ダンサー)
【音楽】 ASA-CHANG(音楽家)
【出演】 小学3年生~6年生の子どもたち
【会場】 世田谷区民会館
【主催】アーツカウンシル東京(公益財団法人東京都歴史文化財団) 、特定非営利活動法人 芸術家と子どもたち、株式会社世田谷サービス公社
【助成・協力】東京都
【後援】世田谷区/世田谷区教育委員会

WRITER PROFILE

Chie Sumiyoshi 住吉智恵
住吉智恵 Chie Sumiyoshi

アートプロデューサー、ライター。東京生まれ。慶応義塾大学文学部美学美術史学専攻卒業。1990年代よりアート・ジャーナリストとして活動。2003〜2015年、オルタナティブスペースTRAUMARIS主宰を経て、現在、各所で現代美術とパフォーミングアーツの企画を手がける。2011〜2016年、横浜ダンスコレクション/コンペ2審査員。子育て世代のアーティストとオーディエンスを応援するプラットフォーム「ダンス保育園!! 実行委員会」代表。2017年、RealJapan実行委員会を発足。本サイトRealTokyoではコ・ディレクターを務める。http://www.traumaris.jp 写真:片山真理

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