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PERFORMANCE

The Bambiest Dance Project [Dans la Salon]
boy Tokyo 2018.11.30 – 12.1

Written by 堀畑裕之|2018.12.21

photo by Azumi Kubota

 

女性だけのダンスカンパニーThe Bambiestは、長年独自の立ち位置を保ち続けている。まず公演会場が、商業的なホールでないことだ。学校、アートギャラリー、ショップ、美術館の中庭… およそダンスを見る場所(という既成概念)を取り外すところで行われる。振付家の菅沼伊万里は、その場所に固有の空間配置や存在理由を利用する形でダンスを構成する。いわば「場のオートクチュール」というべき振り付けだ。商業ホールが公演だけに集中させる無味無臭の「場」であるとしたら、The Bambiestのダンスは、我々がいる「場」をつねに意識させ続ける。客はごく僅かな空間に、居心地良いというわけでないところから、限られた客席で(ほとんどすべての客がお互いの顔を知れる人数で)、ダンスをいわば「目撃」するのだ。

 

photo by Azumi Kubota

 

今回の舞台は、神宮前のヘアサロンの2階だった。到着すると入口の外になにやら人だかりができている。2階のガラス窓から、ダンサーたちがウインドウディスプレイの人形のように、ゆっくりとポーズをとっているからだ。通行人は「あれはなんだ?」と見上げながらスマホで写真を撮っている。パフォーマンスはすでに原宿の街と火花を散らしていた。

受付をすませ、仮設で設けられた席につくと、自分がこれから髪を切ってもらう美容室で順番を待っているような気分になる。というのも鏡やドライヤーがそのまま置かれているからだ。ヘアサロンという日常の非日常の空間が、そのままダンス劇場に変転する瞬間である。やがてヘアメイクが完璧にスタイリングされた美しいダンサーたちが出てくると、彼女たちは植木に水をやったり開店準備をするスタッフを演じ、髪を切りにやってくるオシャレな顧客やヘアスタイリストとして登場する。

photo by Azumi Kubota

 

ダンスは、毎日ここで行われているありふれた仕草を切り取り、時にカリカチュアライズ(戯画化)する。6人の女性ダンサーたちはピンク色のピンヒールをはいたまま、ほとんど動けないくらい狭い空間でお互いをすり抜けるようにダンスを展開する。そのダンスは、いわゆる定型的なコンテンポラリーダンスのような「躍動の純化」ではなく、ファッションや映像や音楽を使って人々の夢や憧れを喚起するエンターテイメントの動きに近い。それは菅沼が近年宝塚や大衆演芸の振り付けをしていることを強く連想させる。だが、そのギリギリのキワで、The Bambiestをコンテンポラリーたらしてめているものはなんだろう?私はその理由を、ゲリラのように偶発的な戦闘を街中で開始する菅沼伊万里の、いつも変わらぬ挑戦心と、時代に敏感なファッションセンスにあると思っている。

 

INFORMATION

The Bambiest Dance Project [Dans la Salon]

boy Tokyo
2018年11月30日〜12月1日
振付・演出・アート・ディレクション:菅沼伊万里

WRITER PROFILE

堀畑裕之
堀畑裕之 Hiroyuki Horihata

服飾ブランド matohu (まとう) デザイナー 「日本の美意識が通底する新しい服の創造」をコンセプトに2005年にパートナーの関口真希子とmatohuを設立。現代日本の文化をファッションデザインに表現するブランドとして東京コレクションや海外のメディアから、高い評価を受けている。

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