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PERFORMANCE

辻本知彦・島地保武 新ユニット「からだ」
象の鼻テラス、2018.4.28 – 30

Written by 住吉智恵|2018.5.30

photo by mao YAMAMOTO

フォーサイスカンパニーで活躍後、ラッパーの環ROYやコスチュームアーティストのひびのこづえなど、領域を問わずさまざまなコラボレーションにひっぱりだこの島地保武。ノイズムやシルクドソレイユなどを経て、森山未來や義足のダンサー大前光市とのプロジェクトでも注目される辻本知彦。2人のダンサーが中心となり、新しいユニット「からだ」を旗揚げした。

新作「あし」では、チェルフィッチュの舞台美術でも注目された彫刻家の金氏徹平を美術に迎えた。その独特のポップで不条理で断片的なオブジェが併置された空間に、ガラス面から夜の港や観覧車の気配が滑り込み、動くものがない開演前のステージがすでに非現実の王国だ。抽象的で即興的な取っ組み合いを想像していたところに、グラマラスなパーティウィッグを揺らして獅子舞に似た異形の男たちが入場し、「みなのもの!」と高らかに祭祀のはじまりを宣言。ははぁこれは時代劇風味かと先読みしているとはぐらかされた。

 

photo by mao YAMAMOTO

 

ステージに脈絡なく散らかった物体を、抜群に冴えた「見立て」で片っ端から消化していくように見せかけて、それらを適切な場所へ移動する謎のベクトルに従ってダンスは進行する。呻きともぼやきともつかない彼らの言葉と身体のやりとりが、不規則なプリーツを折り畳むようなずらし方で巧みにからみ合う構造が心地よい。古今東西、子どもが大好きな「理由なし」「予告なし」「共有なし」の状況に、客席の子どもはもちろん大人たちも終始スリルを味わいながらもウケっぱなしである。

 

photo by mao YAMAMOTO

 

「金氏さんが塔のようなものを建てたときに、この作品の骨になる物語が生まれ、自分たちがなにをつくっているのかを理解してきたように思います」と島地は当日配布のパンフレットに記している。ダンスや音楽などの抽象性の高い身体表現は、ときに美術や文筆といった形式の異なる表現言語を指針にクリエイションの方向性を具体化させ、それが当人たちも驚くほどの効果を生むことがある。本作でもダンサーたちの身体はそれじたいが切っ先鋭く、ほどよく力の抜けた躍動する彫刻だが、舞台上のオブジェと等価に抽出され、解体され、組み換えられることによって、生まれたばかりの儀式の語り部として作品全体にキリッと一本筋を通した。

ユニット「からだ」は今後もゲストアーティストを迎えて創作していくのだろうか。だとすれば、それは何度でも真新しい身体を目の当たりにできるということ。スリリングな活動スタイルになりそうだ。

INFORMATION

辻本知彦・島地保武 新ユニット「からだ」 新作公演『あし』

2018.4.28-30
象の鼻テラス

WRITER PROFILE

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住吉智恵 Chie Sumiyoshi

アートプロデューサー、ライター。東京生まれ。慶応義塾大学文学部美学美術史学専攻卒業。1990年代よりアート・ジャーナリストとして活動。2003〜2015年、オルタナティブスペースTRAUMARIS主宰を経て、現在、各所で現代美術とパフォーミングアーツの企画を手がける。2011〜2016年、横浜ダンスコレクション/コンペ2審査員。子育て世代のアーティストとオーディエンスを応援するプラットフォーム「ダンス保育園!! 実行委員会」代表。2017年、RealJapan実行委員会を発足。本サイトRealTokyoではコ・ディレクターを務める。http://www.traumaris.jp 写真:片山真理

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