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PERFORMANCE

YCC Temporary ダムタイプ
YCC ヨコハマ創造都市センター 2018.9.7-9

Written by 國崎晋|2018.9.28

Photo: Ken Kato

京都を拠点に、さまざまな分野のアーティストがプロジェクトごとに集まり作品制作を行うパフォーマンス・グループ=ダムタイプ。彼らの1990年代の代表作である『pH』と『S/N』の記録映像が、2018年9月7日から3日間にわたりYCC ヨコハマ創造都市センターにて上映された。これまで各所でスクリーニングは行われてきたが、今回は当時ダムタイプで音楽を担当していた山中透がサウンド・オペレーションを担当。記録映像のステレオ音声に対し、シーンごと細かくイコライザーやコンプレッサーで調整を施すことで音のダイナミック・レンジを広げ、公演時を彷彿させる音響空間を作り出していた。作品コンセプトはもちろん、それを実体化する装置や映像の斬新さ、洗練度に対しての評価が高かったダムタイプだが、YCCのような天井高のある空間で作品を追体験すると、音楽も非常に高いレベルであったことが分かる。8日の上映後に行われたアーティスト・トークに登壇した山中は、この2作の音楽がそれ以前の作品とは違うものになった理由について、次のように回想していた。

「1980年代末に(古橋)悌二とともにニューヨークのクラブでハウス・ミュージックの洗礼を受け、音楽の在り方が変わったと感じた。でも、それは自分たちが好きだったプログレッシブ・ロックが変化したものだとも感じ、すごく興奮して新しい音楽を作り始めました」

Photo: Susumu Kunisaki

ダムタイプの中心人物の一人であった故・古橋悌二は山中と大学入学前からバンドを組み、パンクやプログレッシブ・ロックをやっていたこともあるという。そんな彼らが自らの音楽性を更新する必要性を痛切に感じ、ハウス・ミュージックの持つミニマリズムを取り入れて作ったのが『pH』であり『S/N』であったというわけだ。今回の上映においても、特に『S/N』の序盤、“ピッ”というパルス音に、ミュート・ギターのリズムと不穏なパッド・サウンドが絡み、それを切り裂くように重低音が鳴り響くシーンは圧巻だった。後にダムタイプに加入する池田亮司にも影響を与えた、スペクトル的なミニマリズムと音量的なマキシマリズムは、既にこの時点で完成の域に達している。『S/N』は、古橋がエイズに罹患したことをきっかけに、ジェンダーやセクシャリティをテーマに制作された作品だが、それを伝える手段としての圧倒的な音響は、今もなお機能しているということを痛感させられる上映であった。

S/N (photo: Yoko Takatani)

pH (photo: Shiro Takatani)

Photo: Ken Kato

INFORMATION

YCC Temporary ダムタイプ

上映:『pH』『S/N』
日程:2018年9月7日~9日
主催:YCC ヨコハマ創造都市センター(特定非営利活動法人 YCC)
共催:横浜アーツフェスティバル実行委員会 Dance Dance Dance @ YOKOHAMA 2018
企画:長田哲征(YCC / offsociety inc.)
会場:YCC ヨコハマ創造都市センター 1階ギャラリー

WRITER PROFILE

Susumu Kunisaki國崎晋
國崎晋 Susumu Kunisaki

1963 年生まれ。株式会社リットーミュージック取締役。サウンド・クリエイターのための専門誌『サウンド&レコーディング・マガジン』編集長を 20 年間務め、ミュージシャンやエンジニアへの取材を通じての制作現場レポートや、機材使いこなしのノウハウなど多数の記事を手掛ける。2010 年からはPremium Studio Live と題したライブ・レコーディング・イベントを開始し、収録した音源をハイレゾ・フォーマットで配信するレーベルを展開。近年はプロデュース活動も積極的に行い、女性のみのシンセサイザー・カルテット=Hello, Wendy!ではVR対応のミュージック・ビデオも制作している。

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